公衆電話がない!歩けども。
公衆電話なんてなかった。だから私は歩き続けた。小淵沢駅から公衆電話を見つけるまでのちいさな散歩はいつのまにか大きな旅になってきた。
最初はまだ明るいツツジの咲き乱れる道にツツジの蜜の香りを感じながら、余裕いっぱいだった。30分あるいてもまだ余裕。さすがに、ヒールで歩くのはつらいので、裸足で歩いた。どこが痛くない道か探しながら歩いた。アスファルトの道には小石や砂利が多く少し痛かった。白い線の上はコーティングされていて痛くなかった。いつも裸足の動物の気持ちを感じてまだ余裕だった。
どんどん暗くなってきた時、ふと、猿の集団に襲われたらどうしよう!と思い、そこから急に恐怖を感じてちょっと痺れた。あれ?まだまだこの道は終わらないよね…、いつもこの辺りなんだよね、猿がいるのは…と思うが、戻るわけにもいかない。
公衆電話なんてもうない。ペットボトルを持ちながら歌を歌って気持ちを強く持って歩いた。泣きはしなかったけど、私は馬鹿だと反省しながら歩いた。(何も考えずただ進んで、怖くなったら弱気になる。歩き始めなければよかった。今更もう戻れない。)それじゃ駄目じゃないかと。
それから更に20分、車で20分弱の道、思った以上に長くてあたりは闇の中、とにかく猿が怖かった。夜中に猿の集団が犬を襲って、犬は内蔵を食べられちゃって…という話を思い出して久々に怖いという感情を感じた。
悲しいかな、パソコンを持って、書籍が入った重い荷物を持って歩く私。ちょっと走ったりして、気分を高めて進みつづける。
もうあと少し、というところで一台の車が停まって、「乗ってください、この辺りは猿がでるから危ないですよ」と声をかけてくれた。女神様に思えた素敵な女性。小淵沢でカフェをしているという。
感謝感激で、暗い道を抜け、国道にでた。セブンイレブンまで乗せていってもらった。そしてそこで無事に家へ電話した。
早く帰りたくて歩いたはずが、思ったよりも遅くなったけれど、家についた。
彼は裸足で帰って来る妻はどうかといいながら、私の居ぬ間に1人で楽しく作った砂肝の燻製とビールでもてなしてくれた。
白州の夜の空気を思う存分味わったから、少し頭がすーっとした。
たちどまり ゆくもかえるも 闇のなか
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